ゴーゴーボーイよりもハンサムな男
ゴーゴーボーイについた私たちは、ショーの時間まで店内で時間をつぶしていた。
そう、ゴーゴーボーイはショーが人気なのである。客はボーイを買うよりもショー目当てがほとんどなんだろう。
男性を連れて帰ることには何の興味もなかったが、実はショーには結構興味があったのだ。日本では男のいかがわしいモノを眺める機会は沢山あれど、いかがわしいショーなんてお目にかかることはできないのだから。
とはいえ、機会があれば行ってみたいけど別にいかなくてもいいや、ぐらいの気持ちではあった。
男性はパンツ?海パン?の一枚だけ、割とハンサムボーイもいる。
タイは結構イケメンが多いと思うのは私だけだろうか。
そしてドリンクがゴーゴーバーよりも高かった。
私「イケメンいるね」
メガネ君「やっぱイケメンいますね、というかなんかみんな凛々しいですねー」
私「タイに来て思ったけど、この中に限らず外にもイケメンは多いね。特に若い子は紳士的なイメージ。まあ話したことはないけど」
メガネ君「ですねー連れて帰ってもいいですよ(笑)」
メガネ君がニヤニヤしながら言う。
連れて帰ってもいいよ、と言われて初めて分かるが、何度も言われるとこのセリフが結構腹が立つのだ。
つい先ほどまでは、私が彼に言っていたセリフなのだが、立場が逆転してしまったみたいだ。
私「メガネ君だって連れて帰れるよ(笑)ほら、あそこに座ってるのとか、多分あれゲ○の人でしょ、わかんないけど」
メガネ君「残念ながら、ぼくはそういうは興味ないですね(笑) どうなんですかね、でも男多いですね。」
客層を見て私はホッとした。やっぱり男性がほとんどで、女性だけのグループはいなかった。前情報だと女性グループも結構来るとのことだが、今日はどうやらいないらしい。ここで男を連れて帰る子がいれば見てみたいものだったが。女なんてクラブで逆ナンすれば必ず成功するし、一人ただ立っているだけで男からよって来るものだ。それだけの価値がありながらお金を払う人は、どんなタイの旅行マジックに魅せられたのだろうかと気になってしょうがない。
もちろん直接聞いてはないので分からないが、観察した限りだと客層は、
○イが7割 興味本位が3割といったところだろう。
男を呼ぶか、と店員に話しかけられるが、私たちは丁寧に断る。
見るだけでいいんだ。
そうやって、観察などしていると、ついにショーの時間になった。
詳細は説明しないが、ショーは過激だった。ライトかと思ったら、どんどん過激になっていくスタイル定番スタイル。そしてそれは私にとって少し苦手な分野だった。
だからあまりピンと来なかったというのが正直な感想。
どうせ見慣れたモノがポロリするんだろうな、と楽観視していたが、モノがどうこうの問題ではなかった。
まあ、楽しかったといえば楽しかったのかもしれない。
メガネ君「ヤバくないっすか(興奮気味)」
私「いやーちょっとキツイわ(笑)」
メガネ君「うわぁ、、、(興奮気味)」
メガネ君「すげーいやー無理だわー(興奮気味)」
そういうのが好きな腐女子であれば最高に楽しめるのかもしれないショーだった。
でも、こういう世界も見れてよかったと本当に思う。
それに、客とボーイのやりとりもなかなか面白いものだった。
こうしてショーは終わった。
メガネ君「かなりキツかったですね。」
私「いや、めっちゃ興奮してたじゃん!」
メガネ君「いや、してないですよ。でも見れてよかったですわ。ありがとうございます。」
私「いやいや、こちらこそ、ありがとね」
メガネ君「いえいえ、じゃあこの後どこいきますか!?まだいろんなお店空いてますよ!」
私「うーん、どうしようか」
今日は昼間の酷暑の中の観光と、ゴーゴーバーとゴーゴーボーイでもうかなり疲れていた。もう今日の行動は終わりにしたかったし宿に帰ってシャワー浴びて歯を磨いて寝たかった。
でも、メガネ君はまだ元気そうで、今日はこれからでしょという感じがプンプンしていた。彼は19歳の大学生だ。
私は基本ノリが悪い人間だが、さらにこういう時のノリの悪さは断トツでヤバい。ダルかったら絶対に帰宅を優先するつまらない女、いや自己中心的な女がこの私なのだ。
自分中心の私は、メガネ君の物足りない気持ちに気づいていながらも、帰宅を選択するのであった。
こういうのを断るときは、いつも明るく言うのが、わたし流の断り方だ。
私「今日はもう疲れたし宿に帰ろう!笑」
メガネ君「お、帰りますか!今日はもう疲れましたしねー!笑 タクシー捕まえますね!」
予想通りの返答と笑顔だった。
そう、
メガネ君はこういう男なのだ。
自分がまだ物足りなくても、明るく振る舞って、嫌な気持ちにさせないように相手に合わせるのが、眼鏡君という男だった。
メーター可能なタクシーを必死で捕まえようとするメガネ君だが、なぜだかメーターにしてくれないドライバーが多かった。
それでも、メガネ君は頑張ってメータータクシーを捕まえることができた。
私は路肩にただ突っ立っているだけで、メガネ君の頑張りを眺めていた。
タクシーに乗り込む。
私「てかタイ語よく勉強できるね、英語でも通じるのに」
メガネ君「現地語だと相手になんか失礼な感じがしますし、てか本に載ってるのを読んだだけですよ(笑)」
私「でも、明日で帰国しちゃうのに偉いね」
すっかり忘れていたが、メガネ君の初の海外旅行は今回のここバンコク。
そして、メガネ君は明日の午前中にはもう帰国するのだ。事実上の初海外旅行の最終日は今日だったのだ。
私は今日一日、19歳のメガネ君に頼って、時にウザ絡みもしてしまった。
行きたいところがあれば「あそこに行きたい」と言い、なんか面倒になったら「任せた」といって適当に投げたりしていた。
これ、なんなの?と聞いたら、一生懸命ガイドブックで調べて説明もしてくれた。
今日一日、メガネ君は嫌な顔せず、明るく真摯に振る舞ってくれた。
これはメガネ君的に、初めて海外旅行の最終日としてどうなんだろうと思うと、なんだか自分が情けなくなってくるし、そして何よりも初海外旅行のメガネ君がかわいそうに思えてきた。
さっき、どうして帰るという選択をしてしまったんだ。
急に涙が出てきて、私は泣いてしまった。
寝たふりをしながら、メガネ君にバレないように泣いた。
そして、カオサンロードに到着した。
相変わらずカオサンロードは盛り上がっていた。
私はメガネ君の期待に応えたかった。もしかしたら私の勘違いかもしれないけど、できるだけ良い思い出を残してほしいと思った。
私「ねえ、やっぱここら辺でなんか飲もーよ。まだ賑わってるし」
メガネ君「お!飲みたいです!最終日ですからね!!ってかゆっきーさん飲めないじゃないですか(笑)」
私「ちょっとは飲めるよさすがにね(笑)暑いから、飲みたいのよ」
(メガネ君は19歳。便宜上ジュースを飲んだということで)
適当なところに入って、飲み物をオーダーする。
私はここで、メガネ君の考えや思いや彼の日常から恋愛事情までいろんなことを聞いた。
私とは考えや思考が全く違うし理解はできないこともあった。でもやっぱり彼はしっかりしているしイケてる男のように思えるのだ。内容は割愛するが、話を聞いて素直に彼はかっこいいと私は思った。メガネ君はぜったい女にもてるタイプだ。
そして私は、元嬢であることをここで初めて伝えた。私はこのことは誰に知られたくない、絶対に。でも言ってしまったのだ。
たぶん、話しててメガネ君の素が見れて、まだ未成年であどけなさがあった彼には、まあ言っても大丈夫かな、となぜかそんな風に思わされたのだ。そして、これほど相手のことを洗いざらいに質問して、自分のことを話さないのは失礼のように思えたからだ。彼にとっては私のことなどどうでもいいのだろうけど、これは私なりの誠意と感謝の告白だった。いや、もしかしたら、ちょっと飲みすぎただけかもしれないけど。
メガネ君「え!そうだったんですか。滅茶苦茶意外なんすけど、それは冗談ですよね?」
私「いや、ほんとだよ(笑)」
メガネ君「ええー意外なんすけど」
メガネ君が風○嬢を毛嫌いしているのは、今日の彼との会話中に分かっていた。
彼も思い出したのか罰の悪い顔していた。
メガネ君「でも、世界一周ってすごいですよ。しかも女一人で。本当に尊敬します」
その後も気まずくならず楽しく飲むことができた。
今日はかなり濃い一日で本当に楽しかった。
バンコク、特にカオサンの夜は、悪くないかもしれない。
何時間飲んだか忘れたが、いい気分になりながら私たちは宿に帰った。
そしてシャワーを浴びて寝た。
翌朝メガネ君を送るために早起きした。
メガネ君「昨日はありがとうございました!楽しかったです、気をつけて世界一周してくださいね。家近いですし日本に帰ったらLINEください」
私「眼鏡君も気を付けてね!うん、帰ったらまた飲もうね。」
メガネ君「あ、てかFACEBOOKやってますか?」
私「ごめん。やってない(笑)」
メガネ君「わかりました、ではLINEで!これプロミスで!」
私「おーけー!プロミス!」
こうして私はまた、一人になった。
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