友達を大切にできない③
冬休みにあった高校のクラス会も欠席した私。
わたしは愛子と咲子とは完全に絶縁してしまった。
大学の友達は本気どうでもよくなった。
それまでは適度にノリよさそうに振る舞ってきたきたから、『あの子急に変わったな』って思われたことだろう。
もうどうでもいい。
『ノリいいねー』なんて言われたのも過去の話。
中学時代にイジメられていた時に比べれば全然マシだった。
嫌なことも明らかな無視もされないから。
それでもやっぱり、どこかモヤモヤする。
彼氏も特にほしくない、バイトもしてるけど面白くない。どうでもいい知り合いしかいない大学はつまらない。
つまり、かなり暇だった。
ネットを見ていたら、風俗嬢の語り系の話を目撃した。
それを見て『キモイおっさんの相手するんだろうけど、お金いっぱいもらえていいなー』と純粋に思った。
自分のバイトと比べたら天と地だった。扶養に入ってたけど、税金面も心配なさそうだった。
もちろん相手によるが、そういう行為自体に抵抗はなかったし、目先のお金に眩んでしまった。
やってみようかなと思った。
ネットでの体験談を漁れば漁るほど、風俗への抵抗がなくなるのを感じた。
『なんか簡単そうだな』『私にもできそうだな』って思った。
でも、いよいよ応募して面接となったのだけど、面接の待ち合わせ場所に向かう途中で吐き気を催しドタキャンした。それぐらい風俗に対してビビっていた。
また、ここにきてまた自分の大事な身体に罪悪感を感じてしまった。
二回目のアポをとってもらって、緊張しまくったけどようやく面接ができた。
ひきつった笑顔で話したけど、採用してくれた。
体験や初客も、キモイという気持ちよりも緊張が勝ってそれどころではなかった。
しかし、そんなのはすぐに慣れてしまった。
慣れてしまうと普通に難なくこなせるようになった。
フウゾクの仕事は私にとって新鮮だった。嫌な事も多かったが、給料が高い分早々にやりがいを感じる。
また、本業が学生というこの上ない保険が、仕事に余裕をもたせていた。
それでも、毎日出勤するほどの気合と時間はなかった。
しかし慣れてくると、どうやれば人気になれるのか、どうすれば指名をもらえるのか、よく考えるようになった。それが少し楽しかった。
そして指名をもらえると、達成感と楽しみが味わえるようになる。
割と没頭できた。
同僚の子とはただ話をするだけで、決して仲良くなろうとはしなかった。
自分も同じ事をしておきながらも
『私はこの人たちとは違う、私は本物の風俗嬢じゃない。ただの学生バイトだ』
という変なプライドをもっていた。
風俗嬢でありながら風俗嬢を見下すという、もはや救いようがなかった。
こんな性格だから卒業後も戻ってきたんだと今思う。
親が学費を払い、さらには仕送りまでしてもらい、そして奨学金も借りておきながら、それなのに風俗嬢になった私。そんな私の方が見下されるべき存在だった。
心の内がばれないように、そして嫌われないように、でも仲良くはならように、一定の距離感を同僚の方々とは保っていた。
優しい人が多かったけど、私は必要ない交流は一切しなかった。まあ、周りも一線をひいてる人が結構いたけど。
大学の知り合いとも変わらずそんな感じで関係を保っていた。
お金が増えると、娯楽や買い物にお金を使うようになった。こだわりがあるものは以前からブランドで固めていたが、対してこだわりのないとこまでブランドにしてみたりした。
でも、やっぱりなぜか満たされなかった。だから散財はすぐに止めることができた。
私は初めて海外旅行に行くことにして、とりあえずパスポートを取得してみた。
海外旅行は昔からずっと行きたかった。でもハードルが凄い高いと思ってたから、怖くて行けなかった。
深夜特急の影響もあり、アジアもヨーロッパもどっちも興味があったが、アジアは今もなお未開の地域がある印象で怖かったし、食べ物も美味しくなさそうだからヨーロッパにした。
また、当時の私は、海外=欧米というのイメージがあった。
今みたいに一人旅なんてのは全く選択肢になく、さっそく団体ツアーに申し込んだのだった。
大学2年生の夏休み、ついに私は初めての海外旅行でイタリアにいった。
昔から憧れていた海外旅行は本当最高だった。
イタリアはどの都市も素晴らしかった。誰でも知ってる超有名観光名所はもちろん、センスある町並みも本当に素敵だった。そしてなんといっても本場のイタリア料理。
イタリアツアーは、海外旅行を好きになるには十分なほどに強烈だった。
これが海外かと思った。日本語が通じないことにすら感動を覚えた。
そしてなにより団体ツアーだったから、その人たちとの交流もよかった。
自分より一回りも二回りも年上のおじさんとおばさん達。私すごい好きだった。
大学生みたいに着飾ってないし、へんなマウンティングもない、損得勘定抜きに仲良くしてくれる。若いっていいねーって言ってまだガキンチョの私をよくしてくれた。
同い年のわけわからないノリの子達と過ごすよりも、この人たちとのほうが純粋に楽しめるし、じっくり観光できる。
多少旅慣れた今となっては、ツアーで拘束されるのは息苦しいと思ってしまうが、当時はツアーで大満足だった。
こうして私の趣味にヨーロッパへの旅行が加わった。
次の海外旅行はどうしようかなーなんて考えると、少しばかり今の生活が楽しくなってくる。
風俗の仕事も気合が入るようになった。頑張って結果を出せば、それなりの対価は支払われる。それがやる気に繋がったし、そこで自分の目標を達成できるとすごい嬉しい。
こうしてこの仕事にのめり込んでいくと、自分の中で、同じ大学の男たちの印象も変わっていった。女子には頼みずらい出席カードの肩代わりだったり、体良く利用するようになった。まあみんなやっていたけど。
辞めようにも辞めれなかった昼間のバイトもようやくやめることができ、風俗のバイト一本で頑張ることとなった。
大学と風俗のルーチン。大学と風俗、風俗の方がムカつくこともクソ客からの嫌なことも多かったけど(良い人ももちろんいる)、喜びと達成感は尋常ではなかった。なんだかんだ、仕事中の方がイキイキしていたと思う。
そんな時、彼氏ができたりしたけど、それでも私はこの仕事を続けた。
そして別れたり付き合ったり。
新しい趣味の海外旅行も、前と同じように、単発のツアーでチェコとかオーストリアにも行ったりした。
これもすっごい楽しめた。
次第にヨーロッパはツアーじゃなくて一人旅でも行けそうだなと思い始めていた。
ある日私は仕事を少し変えようと思った。店長やスタッフも良い人で申し訳なかったが、違うところに移れば同じ労働時間でもっと稼げると教えてもらったので、違うステージへと移ることにした。
2年生の冬、私は違うところへ移った。
やることは若干変わったが、風俗なんてどれも同じようなものだ。
そして新しいとこで、えりなっていう名前の一個上の先輩に出会う。
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