無念の日本帰国

ファンを見送った後、私もチェックアウトしてシングルルームの格安ホテルに移動した。

一泊したけどハジャイは全然面白くない。今まで刺激的な旅をしてきたからだろう。

ここからマレーシアのペナン島までバスか鉄道で行けるらしい。それならすぐにチケットを取ろうかなと思った。

しかし、一人旅を満喫するようにさらにもう1泊した。

そしてその日、まさかの一報が入った。

親からである。

日本に帰ってこれるなら帰ってきてという一報であった。

しかし『その行事わたし必要！？』と正直その時思ってしまった。私はくそだ。

旅に出るとき、日本に一時帰国なんてありえないと思っていた。

私は最低でも一年以上は旅をしたいなと思い旅立ったのだ。

一度日本に帰るという行為は、今までの旅が世界一周の旅とは切り離された、ただの旅行のうちの一つになってしまうのではないかと心配した。そんなの心の持ちようだといわれればそうかもしれないが。

だから、一時帰国してしまう世界一周旅行者をみては、残念だなあ実際どんな気持ちなんだろうと思っていた。

それに、いろんな人に会っていろんな景色をみて、マレーシアを目前にそれなりにテンションも上がっているこの時に、日本に一時帰国はありえないと思っていた。

そして、帰国しなければならない理由は行事だけではない。

6月、私のとある銀行口座が空っぽになった。そして月々支払わなければならないローンが払えてないぞという連絡を親からもらった。どうやらハガキでお知らせが来たらしい

このローンは少ないもので、その存在すらすっかり忘れていた。メインバンクのゆうちょへの切り替えをすべきだった。いや、すでに払えるだけのまとまったお金があるから、旅に出る前に一括で返済しておけばよかったのだ。旅立つ前に時間が腐るほどあったというのに、世界一周の準備は完璧ではなかった。大人なのにバカとしかいえない。本当に恥ずかしいことだ

 もちろんローンは闇金サラ金といった悪徳なものではない。だから私はダメ元でそこの会社に事情を話した。しかし、それは無理との回答だった。そんなの当然だ。

そのうえ、３カ月？4カ月?忘れたけど一定の期間滞納し続けたらすべての金融機関からの信用が失われますよって脅されるように言われた。思わず私『やめてください』って言っちゃった。それはその会社は関係ない話なのにね。そもそも、だったら払えよって話だし。

だからゆうちょのインターネットバンキングをネット申し込みをしようとしたのだけど、『登録されてる住所はこちらですか？もし違いましたら直接窓口に来てください』って画面が出た。何年前の住所だよ馬鹿かって一人ツッコんだ。登録されていた住所は古いものだった。まあ、住所があってても必要書類の郵送が必要だから、結局ネット申し込みは海外旅行中はできない。

私は誰にも迷惑かけないで生きていきたい。

ましてや親なんてぜったい迷惑かけたくない存在。私はもう子供じゃないし学生じゃない。

でも旅は中断したくなかった。

私は『ごめんだけど私が帰国するまで払って』と断腸の思いで連絡した。

しかし、ハジャイ旅行中に親から緊急の連絡。帰国できるならしてくれと。

やっぱり私は拒否できなかった。月々のローンを払ってもらってる。

そして、帰国の機会がこうしてやってきた。もう迷惑はかけたくない。一度お願いして助けてもらったから、今度はこっちが折れる番だと思った。

ただの一時帰国だから。どうせすぐ出発する。

すぐに翌日の便を調べて購入した。片道切符だ。

日本に帰国したらやっぱりポケモンGOが流行っていた。

そして安室奈美恵のHEROがテレビからよく流れる。どうやらオリンピックのテーマソングらしい。 

7月下旬の話。

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