友達を大切にできない④
新天地で、えりなっていう一個上の先輩と出会った。
すごい可愛いしノリもよかった。友達も多くて人気なんだろうなぁ、と思った。
その先輩は気さくな人でいろいろ話かけてくれた。ただ、私は例のように仲良くはならないようにした。
えりな『ゆっきーってほかのとこでも働いてたの?年下だよね?』
私『はい、移籍してきました。私は二十歳ですが、えりなさんは?』
えりな『へぇー、一個下か。この仕事一本?』
私『学生もやってて、、』
えりな『私も!じゃあ私が先輩だね~(笑)』
私『ですね~(笑)』
えりな『へ~どこの大学なの?』
たまにいる同じような学生風俗嬢だけど、前と同じように風俗嬢の子と仲良くしようとは思わなかった。ただ話すだけ。そう思っていた。
えりなは日が経つ毎にグイグイ来るようになった。
えりな『海外旅行好きなの?』
私『はい。えりなさんも?』
えりな『うん。ちなみに今まで行った国は~○○と△△と~』
と、続々と国名を挙げるえりな。結構行ってんなーっと関心した。インドも行ってガンジス川にも入ったらしい。
えりな『これオーストラリアのレイブー』
と言って、私に海外のレイブパーティの動画を見せてきた
えりなが野外で踊り狂っていた。取り巻きにはチャラついた日本人男女。
うっわぁ…こんなん参加したくねー…って思った。
この時からえりなは、度々こういう動画を見せつけてきた。まるで私を誘うかのように。
私『楽しそうですね~^^』
えりな『でしょ!?ゆっきーはどこいったことあるの?』
私『ヨーロッパしかいったことないです。』
えりな『ヨーロッパもいいけど、アジアも面白いよ。今度一緒にどっか行こーよ』
私『いや、アジアはいろいろと怖いです…。ヨーロッパが好きなので。あと時間ないですし…。』
行くわけない。大して仲良くもないし、仲良くなるつもりもない。それにいま私はヨーロッパで満足。
って思っていた
それでも誘ってきた。ご飯食べにいこーとかそんなものまで誘ってくるようになった。私は新入りの後輩だし、断り切れないから一緒に行くことにした。
初めてのえりなとのご飯は、清水さんも加わって3人でのランチだった。清水さんは高校卒業と同時に風俗一本でやってる25歳。
めちゃ優しい美形お姉さんという感じで、えりななんかとは比べものにならないほどに第一印象が良かった。話しやすくて本当にいい人。こんな色気ほしいわーっなんて思っていた。
『ゆっきーおもろいなぁ。私ゆっきー可愛いから好きやでー』って口癖のように言ってくれた。
しかし、数カ月後に清水さんは辞めてしまうのだけど。それから一度も会ってない。それまでは何度も私達を食事に連れて行ってくれたのに。すごい残念。いまはどこで何してるんだろう…
とまぁ、そんな清水さんとえりなと食事をした。
そこでいろんな話をした。真面目な話とかが中心だったと思う。
どんな内容かは忘れてしまったが、いろいろ考えさせられた。ちょっとえりなへの見方も変わった。殻に閉じこもってないで、分け隔てなくいろんな人と接した方がいいのかなと思い始めた。
想像以上にその時の食事は楽しくて有意義だった。
それからというもの、誘われたら食事には行くようにした。割と楽しいから。
えりなにも心を開くようになった。
えりな『ミクシィやってる?』
私『やってないです』
えりな『あ、もしかしてマイミクされたくない!?(笑)』
私『違います(笑)本当にやってないんですよ。なんか疲れるので』
えりな『だよねー私もミクシィ疲れるんだよねー』
私『ですよね~(うそつけ!)』
えりなはノリもいいし顔もいい。そしてウェーイって海外のレイブパーティでやれるぐらいだから、やっぱり友達も多かった。
もちろん仕事でも人気。
えりなは全てにおいて意識が高かった。
特に仕事への意識は、かなり影響を受けた。
小手先のテクニックとか、モチベーションを上げるコツとか、色々教えてもらった。この女、可愛いだけじゃないな、良く考えてるな、と尊敬した。そして敗北を感じた。
えりなは、客の特徴とかを終わったあと簡単に記録して、それを家に帰ってエクセルでまとめるらしい。自分はどういうことを言って、そして相手の反応がどうだったかとかも記すらしい。こういうタイプの客には、こういう対応が効く、とかそういうことを実践していた。
さすがにこれは私は真似しなかったが、少し引きつつ尊敬した。未だにこれが有効なのか気になる。でもどうやって項目作るのかも謎だし、もっとよく聞いておけばよかったと思う。
『えりなさんすごいですね。ここまでやってるのはえりなさんだけですよ!』
『やったほうがいいよ。みんなやってるから』
『絶対誰もしてませんよ(笑)』
とにかくえりなすげーっと思った。意外に真面目で、そのギャップにビックリした。
私はえりなとよく遊ぶようになった。
えりなは友達が多いのに、私なんかを優先して遊んでくれた。ただ、クラブとかそういう遊び場にも連れてかれた。
『クラブの何が楽しいか分かんないです!』って言っても
『いいからいこうよ楽しいから』って言って連れて行こうとする。
嫌々行ったりしたけど、まぁつまらなかった。私は一切踊らずゆらゆらしてるだけだが、横でノリノリのえりな。
で、男からも声をかけられたりする。それが好みのタイプだと『ゆっきーどうする?この人たちと外いく?』って普通に言うから困った。『いやいかないですよ!』ってそれを全力で拒否し阻止し追い払う私。
『もうクラブいくのやめようよ…』といったけど、この後も何回かだけしゃあなしに連れてかれた。
気が付くと半分タメ口、半分敬語でえりなに接するようになっていた。
そしていつの日か、えりなから『タメ語でいいよ。気を使われるの嫌だから』って言われた。
それでどんどんタメ口になって、いつしか友達のように接することができるようになった。
えりなは友達、そう思うようになった。
私は引っ越しすることにした。私は今まで大学の近くに住んでいたが、通っている大学とお店はかなり遠かったのだ。私は、お店に通いやすい場所に住むことにした。学生ならあるまじき選択だった。
それだけ大学の優先度は低かった。
新しいアパートはえりなの家やいつもの遊び場も少し近かった。
夏休みは楽しかった。えりなは学生最後の夏休みだ。就活もとっくに終わってて、旅行とかも友達と行くらしかった。夏には大学の友達とバリ島にもいくらしい。
私は、えりなとばかり遊んでいた。
『えりな友達多いよね。バリ島のお土産待ってるよ。』
『そんな多くないよ。ふつうだよ。ゆっきー友達いないんだっけ?(笑)』
『知り合い程度の関係だけならいるけどね・・・』
『そっかー。私も実際そうなんだなー』
『いや、いるじゃん』
『合わない時あるしねー。私が風俗で働いてることみんな知らないし、かなり大きいギャップみたいなのを感じるよ。』
『それわかるかも。隠してるともやもやするよね。』
『だから、何でも知ってくれてるゆっきーと遊んでる方が楽しいんだよね』
『あーなるほどね』
あーなるほどって、少し恥ずかしかったからそんな流すような返しをしたけど、そう言ってもらえて私はすごく嬉しかった。
だから私はえりなには全て話したと思う。昔の話から今の話とか、愚痴がほとんどだったけど、全部話した。かなりすっきりしてより一層えりなは信用できると思っていた。
『私も一時期イジメられてたよ。高校時代。人間関係って難しいよね』
『えりながイジメられていたの!?』
『一時期だけどね。無視されたり、冷たくされた程度ね。私ウザかったらしいよ(笑)』
『そうなんだ…。えりながいじめられるなんてありえない。最初は悩みない系の人かと思った!』
『そんな人いるわけないじゃん(笑)』
他にもえりなはいろいろ悩みを話してくれた。
『どっか海外行こうよ。大学の友達との旅行かぶっても断るから』
って言ってくれて、えりなは旅行に誘ってくれた。嬉しかった。