スラタニでの出会い
ランスアンからスラタニへと向かう。
ランスアンからスラタニは近く、すぐに到着した。長距離の3等車は疲れるからもう乗りたくないけど昼間の短距離なら全く問題はない。
スラタニ駅から市内中心部まではかなり距離があり、移動手段はローカルバスかタクシーだ。
着くや否や、私はグーグルマップを駆使して駅員と思われる人に市内へと向かうバス乗り場を尋ねた。
バスは駅からすぐ近く、バスに乗り込むとすぐにバスは出発した。
一時間ほどので市内中心部へと到着。これもグーグルマップがあれば簡単だ。
スラタニという町はパンガン島やサムイ島などのリゾートアイランドへのフェリーが出ており、単なる中継地点として知られている。私もパンガン島への中継地点として、2,3泊してからパンガン島に行くつもりだった。
ランスアン以上パタヤ未満の発展度を誇るスラタニには、なんとショッピングモールがあった。コンビニはセブンイレブン以外にもファミマもある。なかなかである。
安宿もすぐに見つけることができた。一泊700円程度のそれは部屋が綺麗で広くて快適そうだ。
バックパックをベッドの上に適当に置き、町探検をしに部屋から出ようとドアノブに手をかける。
しかしなんと、ドアノブを回してもドアが開かないのだ。どうやらドアノブが壊れているらしい。最悪だ。
ついさっきまで活躍していたドアノブなのに、私が入った途端に壊れるなんて何という不運。幸先が悪すぎる。
ガチャガチャやっても一向に埒が明かない。部屋は2階だから脱出はできないし、毛利小五郎ばりにタックルしてドアを破壊するパワーなんてない。
そのうち恐怖心がわいてきて、ドアをバンバン叩いて「ヘルプミー!ヘルプミー!うああああ!」とドアの小さな隙間から叫ぶもダメ。廊下には誰もいないようだった。
どうしよと思って部屋を見渡すと、安宿にも関わらず固定電話があった。そしてそれは親切にもレセプションへの番号も記載されていたのだ。すぐにかけてみると受付の女性が出た。
「助けて!ドアが壊れてるから早く来て!外に出れない!」
「なに?どういう意味?」
「ドアが壊れたの。で、外に出れない。」
「どういう意味?」
「とにかく私の部屋に来て!ヘルプミー!」
「カー (タイ語でYESという意味)」
その数分後、一人の男が派遣されてきたのだけど、コイツがまた意味不明に怖いやつで困った。
「オープン!オーープンッッ!」ってなぜかガンギレでドアをバンバン叩いてくる。何度も状況を説明をするのだが、その男は理解できないらしくさらに激昂するのだった。
怖くなって再びレセプションの女性に電話して「あなたがきて!!」というと、すぐに来てくれた。ようやく状況を少しわかってくれたらしく、男は隣の部屋からベランダのような足場を蔦って、わたしの部屋の中へ入ってきてくれた。
そしてドアを取り外す作業に30分かかり、ようやく脱出できた。そして空いていた隣の部屋に移動。
ほんとなんなんだよ…
早々に起こった萎える出来事にも屈せず、私はさっそく街歩きを開始した。
スラタニは外国人はいるのかと思いきや、誰一人として見かけない。この土地に住むタイ人ばかりだ。
メインロードらしきところにナイトマーケットがあった。このスラタニにもナイトマーケットはしっかりとある。ランスアンのナイトマーケットに比べると、スラタニのそれは賑やかだった。
地元の大学生と高校生が制服姿のまま買い食いして活気に満ちており、たこ焼きや寿司の屋台があった。
しかし私はこのナイトマーケットは素通りし、近くのレストランでご飯を食べようかと思った。
そのままスラタニの町を歩いていると、一人の東アジア系の男が近づいてくる。よく見ると明らかに韓国人とわかると容姿だ。あっちも私が外国人と気づいたのか凝視してくる。不自然にみえるぐらいお互い凝視し合いながらすれ違った瞬間、しびれを切らしたのかあっちから話しかけてきた。
韓「ジャパニーズ?」
私「イエス」
韓「ワタシノナマエハファンデス。」
私「え!?日本語話せるんですか?」
韓「??」
私「えぇ…」
韓「日本語は話せないよ笑」
私「そうなんだ(ああ、よくいる自己紹介だけできる人ね)」
ファンという男、予想通り韓国人だった。27歳の彼がなぜ中途半端に日本語ができるのかというと、彼はベトナムにある日本企業とビジネスをしていた経験があるからだ。しかも彼の親は社長で、いま彼はそこの社員として働いているのだ。この度長期休暇が取れたらしい。
私たちは近場の屋台でご飯を食べながら話し込んだ。
旅人が出会うと決まって”どこからきたか” ”どのくらい旅するか”等々の旅会話がある。
私「私は昨日ランスアンからここまできたよ(ランスアンなんて知らないだろうなぁ、へへへ)」
ファン「え!?泊まってはないけど俺もそこ通ったよ。」
私「うそ!?なんでそんなとこを!?」
ファンは私に勝るドヤ顔でこれまでの旅路を語る。レンタルバイクで旅とは、確かにここまでドヤれるほどのことはある。
ファンはこれからプーケットに行くためにさらに南下するらしい。そしてバイクを返しにまたパタヤに戻るのだとか。
すごいねーいいねーっと褒めていると、彼は私を誘ってきた。
「じゃあユッキーも一緒にいく?俺のバイクの後ろに乗ってさ」
「行かないよ。わたしパンガン島に行くから」
「一人でパンガン島に行くの?一人でパーティー楽しむの?クレイジーだねー」
「お互いクレイジーね」
パンガン島はパーティが盛んで踊り狂う島だということはタイに来る前から分かっていた。そしてそれは私には到底楽しめないようなものであり、参加する気なんてなかった。しかし友達だった人が以前しきりに勧めてきたので、見てみたいなぁと思っていた。そんな軽い理由だけど、パンガンのためにタイに来たと言っても過言ではない。
しかし、いまパンガン島を目の前にして、そしてファンの問いかけにより完全に行く気を失ってしまった。行ったところで楽しめず萎えてしまうのが目に見えているのだ。
「パンガンへのチケットはまだ取ってないから、実際は行くかはまだ分からない。バイク旅って楽しいの?危なくないの?」
私はファンにバイク旅について尋ねた。
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