友達を大切にできない②
大学の入学式は予想通り一人ぼっちでの出席。
大学で友達ができるか不安だった。
それでも、高校入学前ほどの不安ではなかった。
高校生活で自信が戻ったし、なにより3人のホームページの日記を確認したら、みんな大学生活の不安を嘆いていたから。
大学は高校とはまるで違った。
小学校、中学校、高校、大学。
この中で大学が一番異色だった。周りの人を見ているだけで『あーなんか違うな』と微妙な違和感を早々に感じてしまった。
初めの学科紹介の講義で、一人の女子に話しかけられた。とりあえず一緒に行動できる友達のような子をゲットできたのだった。
そしてその子はすでに友達を作っており、そのグループにいれさせてもらった。男子の知り合いも自然に広がっていった。
少しぎこちなさと違和感を感じるが、とりあえずぼっち飯は回避できて安心した。この時は、”一人”を異様に怖がっていた。
でもなぜか、大学の人達と仲良くなれそうにない。毎日そう感じていた。
自由で物理的に広すぎる大学よりも、狭い空間に閉じ込められていた高校時代の方が、友達と心を通わせるのは簡単だった。
もしかしたら、ただ私が友達本来のありがたみを忘れてしまっただけかもしれないが。
お酒は苦手だけど、飲み会にも参加してみた。でもやっぱり合わなかった。みな悪い人ではないのだけど。
それでも私は、雰囲気を壊さないようにノリ良く接していた。みんなに合わせようとしていた。
でも、そういう場に出席する度に『なんかみんな無理して頑張ってるな。こんなんが楽しいの?』って思いつつ…。
そして次第にうんざりしてくる。特に男のノリが嫌だった。酒の酔いでしか近寄ってこれないような、不自然に縮毛バリバリのストパー大学デビュー男だったり、ありふれた茶髪パーマ男が女子たちにキモイ交流をしかけてくる。千鳥足で。
なんなんだこいつらと思った同時に、飲み会って嫌だなと思った。
もう、かなり斜に構えていた。
そんな時、高校時代の親友二人を思い出してしまう。
心の奥底で〝私の地元の友達はみんなよりもっと面白いから〟って見下していた。
それもあってか、私はホムペの日記で『高校に戻りたいわー 高校のみんな最高だったわー』みたいな投稿を度々していた。更新率も高かった。
一方で愛子と咲子は更新がガクッと減っていた。『毎日飲み会でやばい、でも最高』みたいのがポツンとあるぐらい。更新があんまりないから、何度もコメントしたり、メールで近況確認をしていた。
かなり不安になった。二人が離れていくような感じがしたから。
しまいには、『ミクシィ始めたからマイミク宜しく』『ミクシィはじめた。みんなもやろーよ!』みたいな投稿が二人からあった。
そっから二人はホムペには手を付けなくなってしまった。
なんでだよ…
高校時代の他の友人たちも、ミクシー始めたーとか言い出していた。
私も大学の友人に誘われており、ミクシィには登録していた。ミクシィのあの雰囲気に気持ち悪さを感じていたけど、みんなと仲良くしないといけないからほどほどにイイネやコメントとかをつけたりしていた。
自分がイイネとかメンションをもらいやすいように片っ端からイイネつける人とか、なんか変な自慢する人とか、とにかく見てくれと他人とのマウンティングがひどかったのを覚えている。
くっそだるーと思った。
そしてミクシィで、高校時代の親友二人が私の知らない人とすごい楽しそうにしているのを見ると、ものすごく悲しみがこみ上げてくる。
“ああ、私より大学の友達と絡んだ方が楽しいんだな”と。
だれと仲良くなろうが、だれと楽しもうが、いくら親友といえどもそれは個人の自由だから私は口出しはできない。それに、こんな恥ずかしい思いを曝け出したらとてつもなくキモイ奴だから、わたしは二人には何もいえなかった。
ただ黙ってミクシィを眺めてしょぼくれていた。嫌でも見てしまう。気になるから。
それでもメールでは『絶対GWに会おーよ』と連絡しあっていた。それが私を少しだけ安心させてくれる。
友達に誘われるがままにサークルの新歓とかも参加したが、私はもう無理だった。
だから私はサークルには入らなかった。どっかのインカレでも入ったら楽しいのかなと思っていた。
ついにゴールデンウイーク、愛子と咲子と会うことができた。でも日程調整の段階で、二人ともNGの日が沢山あったのだ。どんだけ忙しいのか。
それでも、ようやく取り付けることができた。場所は当たり前かのように居酒屋になった。
居酒屋か…3人ともそこまでお酒強くないのにね。
久々に会うと、二人の感じがなんか変わったような気がした。
当たり前だけど、会話の内容はもれなく大学の話だった。
『サークルの先輩がー』
『学科の友達がー』
『ミクシィでー』
そんなのばっかだ。本当に楽しそうに話す二人。わたし全然楽しめてないや
咲子『ゆっきーはどう?ミクシィであんまり投稿無いから、どうなのか全くわからないんだけど。』
私 『大学?結構楽しんでるよ。飲み会ばっかりだよ。てかイケメンの友達いるならうちらにも回してよ~(笑)』
咲子『任して(笑)二人に紹介してあげる』
私 『さすがー!』
大学なんか全然楽しくないけど、正直に楽しくないって言ったら、楽しんでる二人においていかれる感じがした。つまんない暗い話しなんてしたら雰囲気が壊れそうだから、こう言ってしまった。
この瞬間、”気軽に何でも話せる友達”から”気を遣う友達”になってしまった。
2人との再会は、結構疲れるものだった。やっぱりどこかおかしい…。
そして二人ともお酒を飲めるようになっていた。顔が赤くなって盛り上がってる二人。
また、軽はずみで咲子にイケメンを紹介してくれと頼んだが、トントンで話が進みすぐに紹介してくれた。
私はまもなくして、咲子に紹介してもらった人と付き合うことになった。別にそこまで惚れてなかったけど、見た目も好みだったし、とりあえずノリで付き合ってみた。
彼女になってみると普通に良い男だった。でも咲子の話とかしてみても、学科は違うからそこまで仲良くはないらしい。そんな仲だったんだ。やっぱ大学生ってそんなもんだよね。
しかしそれにしても、咲子から紹介してくれた人と私は付き合ってるというのに、私と咲子、もちろん愛子も、連絡するのはだんだんと減ってきた。
愛子と咲子はミクシィにハマってて、そこで二人がコメントでやり取りしているのは何度も目撃したけど。
私はミクシィはただ見るだけになって、もうそこには入り込めなくなっていた。
そしてついに私は、大学生活の便利ツールであるミクシィを退会した。
精神衛生に良くないと思ったから。見てると辛くなってくるから。
大学生活は適当に過ごしてはいたけど、話しを合わせるのが本当に苦痛だった。みんななぜか無駄に話しかけてくる。そして無駄に盛り上がろうと何かを企画して誘ってくる。
私は彼氏に依存しまくった。とりあえず彼氏と遊んでいればいいやって思っていた。
愛子と咲子とも昔のように楽しい関係になれるさと期待していた。
バイトも始めた。
そうして過ごしてると夏休みになった。
夏休みは最高の期間だった。大学が休みだから、どうでもいい関係の人とは会わなくていいし、周りに合わせなくていい。気を遣わなくて済んだ。
そして二人から遊びの誘いがきた。久しぶりの連絡だった。
また居酒屋だった。
そして以前よりも激化して、また入り込めないような話だった。
『なんでミクシィやめたの!?』って聞いてくる二人。
ミクシィってそんな重要なの??
ミクシィで近況報告するのが大学生のルールなの??
なんなの…
てか咲子は、わたしが大学に気が合う友達がいないことやっぱり知らんのかな。私の彼氏から話とか聞いてないのかな。
このとき私が楽しんで話せる話題は、紹介してもらった彼氏の話だけだった。
帰って泣いた。
たとえ彼氏にこれを相談しても、決して理解してもらえないだろう。彼氏もミクシィ中毒で大学生活を皆と同じように普通に楽しんでる、気持ちは理解してくれないだろう。
私は夏休み中は大学時代の知り合いとは一切会わなかった。付き合いで誘われたりもしたけど、ミクシィをやめてから誘いも少なくなった。
そして、夏休みの中盤にもまた遊びの誘いが二人から来た。
やっぱり会う前はみんなと無邪気に楽しむ時間を想像してしまう。
でも、実際に会ってみるとやっぱり苦しかった。
もう完全に別人としか思えなかった。まるで他人。
どうやらサークルの合宿やらなんやらで色んなところに出かけて楽しんだらしい。
本当に楽しそう。
2人は、私がメンドクサイなって思うことを大学で楽しんでいた。斜に構えていた私と違って純粋に何事も楽しんでいたようだった。
『私達も3人でまたどこか旅行かない!?温泉とか!』
って二人は乗り気で誘ってきた。
しかし私は、
『その日はシフトが入ってて~』
って感じのことを言ってはぐらかして、旅行を拒否した。
2人はすごい残念そうにしていた気がする。行けばよかったって後悔してる。
でも、この時は本当に疲れると感じてたから。
訳が分からないぐらいに疲れるし悲しいから。それなのに今までみたいに二人に依存するのは辛いことだった。
なんでどうしてこうなったんだろう。
家に帰って私は、今後一生この二人と遊んでも楽しいことはもう無いだろうと悟った。
そう思ったら、めちゃくちゃ涙が出てきた。そこから何日も不安定になっていろいろ考えた。
もういい
そして最終的に“人間関係を切る”ことにした。
超最高の高校時代の親友を、超最低の私は切った。
メールも着信も拒否。
ゴミクズクソ女の私は、超優しい友人に対して酷いことをしてしまった。ただ、”合わなくなった”というだけで。
その後すぐに彼氏から『咲子からお前と連絡付かないって言われたんだけど。咲子嫌いなの?』と言われたが、私は『全然嫌いじゃない。でも今はほっといてって言っておいて』と返した。
これ以降、彼氏から何度も『咲子がいろいろ言ってくるんだけど…』と心配されるが、私の返答に変わりはなかった。『何もなかったけど、いまは遊ばない。とりあえずほっといてほしい。』と
そして一カ月後、私は彼氏と別れた。普通にフラれた。
フラれたのは悲しかったけど、友達を自ら切ったことのほうが何百倍も悲しかった。
私が自分から勝手に切ったというのに、なぜか被害者意識を感じていたのだから、当時の自分は本当にクソな女だった(今もクソだけど)
彼氏と別れたその一か月後あたり、バイトから帰ると私のアパートの郵便受けに手紙があった。
愛子と咲子からだった。
『二人でゆっきーの家来たけどいなかったから手紙置いておくよ。何があったか分からないけど理解できないでごめんね。心配してるぞー。落ち着いたらでいいから、またあそぼ』
と書かれた置き手紙があった。
わざわざ来てくれてたんだ・・・。
やっぱり二人とも優しくて最高でかなりの人格者。
かなり泣いた。てっきり大学の友人ばかりで、私なんてどうでもいいのかと思っていた。
でももう無理だった。もう合わせる顔なんてないから。一回離れると、どうしたらいいのかわからないから。
多分、もう仲良くなれそうにない。
私が思ったこと言えばよかったのかな。でもそんなこと言えるわけなかった。
いまも後悔してる。もっと辛抱強く関係を保てばよかったって。
ごめんよ。
大学1年の冬、私マジで人間関係保てない人間なんじゃね?と本気で思い始める。
『これから良いことあるんだろうか』と思いながら大学生活を過ごす。
そんなとき、私はインターネットで風俗嬢の語り系の話を発見した。
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