イギリス人ジェミー
〝ジェミー〟という男が‘私のパタヤの彼氏になりそうだった。
40歳のイギリス人のウェブデザイナー。写真ではすごい優しそうな顔。パタヤに来て4日目らしく、私とほぼ一緒だ。
顔合わせは次の日だった。その日からでもよかったのだが、いきなりも嫌だし一泊のホテル代払っちゃったし、それに、もっと良い人からメッセージの返信がくるかもしれないし..。(最低な女です)
でも結局、まともなメッセージは誰からも来なかった。
そして次の日。
約束だと、彼がわざわざホテルまで向かいに来てくれる。この紳士な対応にあたしは一先ず安心した。しかし、そういうレディーファーストが度を越した過保護にならなければいいけど。
とにかく今日一日は、彼を見極めないといけないと思った。今のこの環境は誰も助けてくれないのだ。当然、メッセージで様々な質問をして見極めようとして、安全そうだなと判断したが、やっぱり会って顔を見て話さないと、こればかりはわからない。少しでもヤバいと感じたらバイバイするつもりだ。
約束の11時、彼が来た。しかもまさかのバイクで登場。
意外と、、いや、かなり緊張するなこういうの…。
「おおー!きみがゆっきーかい?」
「イエス!ジェミーだよね?よろしく」
「よろしく!!そのでかい荷物をアパートに置いたほうがいいな」
「ところでそのバイク借りてるの?」
「うんそうだよ、それにしても本当に日本人なんだね。旅行はどんな感じ?」
ジェミーは写真通り、ニコニコしてて優しそうで第一印象は悪くなさそう。
それに、盛られた私の写真と実物とのギャップにも驚いてなさそうで良かった。この写真マジックで失望させてしまって、一週間という約束を破られては私は困る。
でも、一目見て分かったが、顔合わせでだいぶ嬉しそうにしていると感じた。
本当はアパートに行く前にご飯を食べたかったけど、ペース負けしてさっそく彼のアパートに向かった。
メッセージのやり取りでも言っていたが、彼はアパートを借りてそこに住んでいるらしい。それも来て二日目に彼は借りたという。すぐにアパートを借りるなんて結構お金持ちなんだな、とその時は思った。ホテルが割と高いパタヤ。一番安いシングルルームで安くて2000円弱もする。
そんな彼のアパートは、簡素だけど清潔感ある綺麗な部屋だった。日本とは違ってベッドもあるし、クローゼットも備え付けられてある。これでリゾート生活を送っているなんて羨ましい。まあ私は今日からそこにお邪魔できるのだけど。
荷物を置いて、少し話をした。
私はルールが必要だと思っていた。特にお金の支払いだ。最初に全額払うのは彼からしたら怖いだろうし、最後にいただくのは私にとって怖い。
「毎朝2500バーツでいいかな?」
「わかった。そうしよう。」
すんなり受け入れてもらえてよかった。
その後もいろいろな会話をした。私の世界一周の話とか、彼の話とか。
やっぱり私は、一対一だと結構話せる。
そういえば、英語での会話に限らず日本語でもそうだった。3人や4人になってしまうと、途端に私は会話に入れないことがある。でも、一対一なら私はよく話すと思う。
「マンチェスターって知ってる?俺はそこに生まれたんだ」
「知ってるよ。サッカー有名だよね。マンチェスターユナイテッドでしょ?好きだよ。(まぁ実は日本代表しか興味ないけどね)」
「お!フットボール好きか!誰が好き?」
「やっぱり昔は香川選手が好きだったよ。彼はいまはドイツにいるけどね(ドヤァ)」
「世界で一番好きな選手はだれ?」
「いまはブラジルのアルマーニかな」
「アルマーニ!?誰だそれは…分からない…。ネイマールのことか?」
「あ、それ!分かってたけど間違えちゃった(笑) (ミスった..。)」
EXILEのMakidai御用達のブランド名とごっちゃになってしまった。知ったかして調子に乗るのはよくない。日本で働いてたときは、国内の野球とサッカーが分かっていればよかったが、海外に出れば海外の人気スポーツも抑えないとダメなのかもしれない。
あと、イギリスではサッカーはフットボールと呼ばれているらしい。
彼はフリーランスらしく、働く日は自分の裁量で決めれるが週に4日働くのが普通だそう。ジェミーは規則正しい真面目人間だった。仕事場は昼間のカフェ。ということは、私には結構自由な時間がありそうだ。
一番ビックリしたのが、なんと彼のアパートは月15000バーツ(45000円)。綺麗でそこそこ広いのにめちゃくちゃ安いのだ。彼が言うに、パタヤは東南アジアにしてはホテルは高いけど、アパートがかなり安いとのことだ。少し外れのところに行けば、日本円にして2万円切るアパートもあるらしい。しかも誰でも契約できるらしい。即日入居もできる。
パタヤに何度も来ている彼曰く、格安でリゾート生活を送るなら、ここパタヤなんだとか。
「英語うまくないけど、今勉強中だから遠慮せずに話して。早くても構わないからさ」
「分かった。分からないときはいつでも聞き返してくれ。何度でも話してやろう」
一緒に生活する以上、相手の人柄というのは物凄い重要。その意味では、現時点でジェミーは最高のパートナーといってもいい。
そして、彼の夜は非常に淡泊だった。加えて、アブノーマルのかけらもないノーマルな男。お金は少ないが、良客といえば良客かもしれない。
こうして、まったりした私のパタヤリゾート生活が始まる。
しかし、こんな長くいるとは思わなかった。
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